生活防衛の裏ワザとして、ネットや古い情報番組でまことしやかに語り継がれてきたのが「トイレタンクの中に水を入れた2リットルのペットボトルを沈めると節水になる」という手法です。しかし、この民間療法は水道設備関係者や住宅メーカーが口を揃えて「絶対にやってはいけない禁忌」と警鐘を鳴らす危険な誤解です。
水洗トイレの便器とタンクは、緻密な流体計算によって「〇リットルの水が一気に流れ落ちることで規定のサイホン現象を発生させ、排管の奥まで汚物を押し流す」というワンセットの設計が施されています。タンク内に異物を入れて物理的な水量を強引に減らすと、便器内の汚物は視界から消えても、床下の排水管の中で汚物が途中で止まってしまい、配管全体の深刻な閉塞事故を引き起こします。
さらにタンク内部は非常にタイトな構造をしています。沈めたペットボトルが水流でわずかに位置をずらしただけで、浮き球のアームに干渉して給水弁が開いたままになったり、フロート弁のクサリに引っかかって弁が閉まらなくなったりします。結果として数日間にわたり水が流れっぱなしになり、数万円規模の高額な水道代請求が届くという本末転倒の被害が後を絶ちません。
水位を微調整したいのであれば、ペットボトルを入れるのではなく、正規のトイレ 浮き球 調整を行うのが鉄則です。ボールタップの支持金具にある調整ネジを回すか、樹脂製アームの角度を正規の手順で変えるだけで、安全基準の範囲内で水位を数センチ下げる微調整が可能です。