仙台国分町を訪れた人々を大いに迷わせるのが、「味太助」と「旨味太助」の存在です。両店は目と鼻の先に位置し、どちらも「太助」の名を冠しているため、ネット上では「本家争いがあるのではないか」「仲違いして分裂したのか」といった真偽不明の憶測が長年飛び交ってきました。しかし、味太助暖簾分けの真相を取材すると、そこには日本伝統の職人文化と家族の物語が存在します。
創業者の長男として生まれた佐野和男氏が跡を継ぎ、正統な直系本流として暖簾を守り続けているのが味太助 本店です。一方、創業者の佐野啓四郎氏のもとで長年腕を磨き、その娘婿(愛弟子)として独立を認められた佐野八勇氏が開いた名店が旨味太助となります。つまり両者は敵対関係などではなく、偉大なる創始者の味と技を二つの異なる系譜として正統に受け継いだ、いわば兄弟店のような間柄なのです。
双方は同じ源流を持ちながらも、店内の空気感、焼きの美学、肉の仕立てにおいて明確な個性の違いを確立しています。その相違点を客観的データとともに整理しました。
味太助本店が守るのは、初代のレシピを寸分違わず再現する求道的な端正さです。仕込みの段階で塩を振り、余分な水分を抜きながら旨味を凝縮させる工程は極めて厳格。焼き上がった牛タンは均整が取れており、舌の上に広がる塩味と脂の調和が実に見事です。
対する旨味太助は、店主が巨大な焼き台の前に立ち、うちわを片手に炭火の炎を自在に操るライブ感が魅力です。火力を巧みに使い分け、外側をカリッと香ばしく焦がしつつ、内側に弾力あるジューシーさを残す焼き技法は圧巻。職人の熱気がそのまま皿の上に宿ったかのようなダイナミズムを誇ります。