日本国内の園芸市場において、一年草を中心とした花壇苗の消費が落ち着きを見せる一方、一度植えれば毎年芽吹き、年を追うごとに庭の骨格を形成していく「宿根草(ペレニアル)」への注目度は年々高まっています。そのムーブメントの頂点に君臨し続けているのが、長野県上田市に本拠を置くおぎはら植物園です。
同園の最大の推進力となっているのが、店主である園芸研究家・荻原範雄氏の存在です。NHK趣味の園芸をはじめとするメディア出演や、『荻原範雄の育て方図鑑』シリーズ(『おぎはら流 宿根草の育て方図鑑』など)を通じて同氏が提唱してきたのは、「日本の気候風土に真に適応する強健な植物を、自然な生態のまま育てる」という現場主義の哲学でした。
一般的な大量生産型の苗生産では、出荷時の見た目を華やかにするために温室で加温し、開花を促した状態で店頭に並べられるケースが少なくありません。しかし、そうした促成栽培苗は、一般家庭の庭に地植えされた途端、霜や寒風、夏の多湿に耐えきれず枯れてしまうリスクを抱えています。
これに対し、おぎはら植物園が送り出す苗は、標高が高く冬には氷点下10度近くまで冷え込む信州の過酷な露地環境で鍛え上げられています。地上部を無理に太らせるのではなく、ポットの中で太く健全な根鉢(ルートボール)をじっくり形成させる育成手法を徹底しているため、植え付け後の活着率が一般的な流通苗と比べて桁違いに高いのです。愛好家たちの間で「おぎはらの苗は春からの爆発力が違う」と語り継がれる背景には、長野の気候と生産者の揺るぎない栽培哲学があります。