御幸の浜の日常を観察すると、海水浴シーズン以外の時期にも熱心に通い詰めるふたつのグループが存在します。それが「アングラー(釣り人)」と「朝の散策者」です。
サーフフィッシングの要衝|急深地形がもたらす青物の回遊
釣り場としての御幸の浜は、関東のアングラーの間で「駅徒歩圏内の一級サーフ」として知られています。相模湾特有のすり鉢状の地形により、浜からわずか数メートル先で急激に水深が数メートル以上落ち込むブレイクライン(カケアガリ)が形成されています。この地形的利点のおかげで、遠投しなくとも沖合を回遊する魚が波打ち際近くまでベイトフィッシュを追って接岸してきます。
春から秋にかけてはメタルジグを用いたショアジギングでイナダ(ブリの若魚)、ソウダガツオ、サバなどの回遊魚が狙えるほか、底生魚であるヒラメやマゴチ、さらには引き釣りのシロギスが狙い目となります。現場で竿を出す地元ベテラン釣り師は、「ここは砂利底だから根掛かりが比較的少ないが、波打ち際の巻き波が強いため、波に仕掛けを取られないようラインメンディングが釣果を分ける」と証言します。ただし、海水浴期間中の日中は遊泳エリア内での竿出しが制限されるため、釣行は早朝や夕マズメ、あるいはオフシーズンに集中します。
水平線を紅に染める日の出スポットと「元旦初泳ぎ」
もうひとつの顔が、西湘屈指の日の出スポットとしての価値です。相模湾越しに三浦半島方面から昇る朝日は圧巻で、早朝の澄んだ空気のなか、海面が黄金色に染まる光景を目当てに写真愛好家や散歩に訪れる人々が絶えません。
さらに御幸の浜は、毎年1月1日の早朝に行われる伝統行事「小田原元旦初泳ぎ」の舞台でもあります。冷気配る極寒の波打ち際に水着姿の参加者が集い、新年の無病息災と海の安全を祈願して一斉に海へ飛び込む光景は、小田原の冬の風物詩として各種メディアで新年の幕開けとともに報道されています。地域コミュニティの精神的な結束点としても、この海岸は深く機能しています。