日本橋でどら焼きを語る際、誰もが真っ先に名を挙げるのが「清寿軒」と「うさぎや」の存在です。東京を代表する名だたる和菓子処の中でも、この二大巨頭が放つ熱量は群を抜いています。
文久元年(1861年)創業、160年を超える歴史を紡ぐ日本橋清寿軒のどら焼きは、ひと目見た瞬間に言葉を失うほどの圧倒的な餡のボリュームが最大の特徴です。手に取るとずっしりとした重量感が手のひらに伝わり、皮の隙間からこぼれ落ちんばかりの粒餡が顔を覗かせます。この餡は、厳選された十勝産小豆を熟練の職人が大鍋で4時間以上かけてじっくりと炊き上げたもの。上白糖と純度100%の蜂蜜を用いた皮は香ばしく焼き上げられ、濃厚でありながらくどさのない餡の旨味を受け止めています。
一方、昭和初期の創業以来、日本橋の旦那衆や兜町の金融マンに愛され続けてきたのが日本橋うさぎやのどらやきです。上野の名店「うさぎや」の創業者・谷口喜作氏の三男が暖簾分けした同店は、日本橋中央通りから少し入った路地に佇みます。うさぎやの真骨頂は、レンゲの蜂蜜を練り込んだきめ細やかな皮と、みずみずしく炊かれたつややかな粒餡の「完璧な一体感」にあります。指先でつまむと吸い付くようにしっとりとした皮の弾力、口に入れた瞬間にとろける餡の滑らかさは、まさに職人技の結晶です。
溢れ出る小豆の野性味と重量感に浸りたいなら清寿軒、繊細で滑らかな調和と上品な甘みを堪能したいならうさぎや。甲乙つけがたいこの二大巨頭の個性の違いこそが、日本橋を日本屈指のどら焼き激戦区へと押し上げている要因といえます。