物語の京都編において、志々雄真実一派との決戦を前に自らの無力さに苛まれていた相楽左之助は、下諏訪の山中で修行僧・悠久山安慈と運命的な出会いを果たします。そこで安慈が見せつけたのが、巨大な岩石を一瞬で粉微塵にする絶技「二重の極み」でした。
作中で解説される打ち方・やり方の基本構造は極めて論理的です。あらゆる物体には外部からの衝撃に対抗する「抵抗(反発力)」が存在します。二重の極みは、拳の関節(第一関節や掌打)による第一撃でその抵抗を打ち消し、抵抗がゼロになったわずか刹那(作中描写では75分の1秒以内)に正拳による第二撃を叩き込むことで、物体の硬度に関係なく内側から粉砕します。
安慈はこの原理を十年の歳月をかけた荒行の果てに編み出し、拳のみならず全身の打撃、さらには刀剣の柄を介した斬撃にまで応用していました。さらに作中終盤では、第二撃の直後に指先を開いて押し込むことで衝撃波を三段に重ねる「三重の極み」という発展形まで登場し、読者の想像力を刺激し続けました。
作者の和月伸宏氏が明かしたところによると、この技の元ネタ・着想源は、中国武術における「発勁(はっけい)」や「寸勁(ワンインチパンチ)」、さらには打撃系格闘技のコンビネーション理論にあるとされています。一見すると物理法則に則っているかのように思わせる説得力こそが、この技が少年たちを魅了した最大の要因でした。