なぜ人間は、偶然作られた古いカードゲームの絵柄に、現実の政治家の姿を見出してしまうのでしょうか。ここには人間の脳が持つ強力な認知心理学的メカニズムが作用しています。
第一に作用しているのが「パレイドリア(Pareidolia)現象」です。雲の形が動物に見えたり、コンセントの穴が人の顔に見えたりするように、脳は曖昧な視覚情報の中から無意識に「知っているパターン」を抽出します。「Charismatic Leader」の絵柄は、目鼻立ちの整った白人・アジア人どちらとも取れる絶妙なタッチで描かれており、一度「進次郎氏に似ている」という刷り込みを受けると、脳が自動的に特徴の一致点ばかりを強調して知覚するようになります。
第二に「確証バイアス(Confirmation Bias)」と「アポフェニア(無作為なデータに関連性を見出す傾向)」の複合作用です。「カードは未来を予言している」という仮説を一度信じ込むと、人間は符合する要素(若さ、演説スタイル、総裁選での躍進)ばかりを無意識に集め、符合しない無数の要素(生い立ち、政策内容、カードのゲーム的効果値など)を無視してしまいます。進次郎氏の特異なキャラクター性が、大衆の認知バイアスを刺激する触媒となっているのです。
【プロの結論】オカルト言説をエンタメとして健全に楽しむための判断基準
メディア論および情報リテラシーの観点から言えば、こうした都市伝説との付き合い方には明確なリテラシーが求められます。
【楽しむことに向いている人】
・カードゲームの背景や1990年代のアメリカン・ポップカルチャーを理解した上で、「よくできたパロディ」として鑑賞できる人。
・政治情勢やメディアの報道姿勢を客観的に観察し、都市伝説を「現代社会を映し出す鏡(フォークロア)」として批評的に捉えられる人。
【触れるのを慎重にすべき人】
・「世界は一部の秘密結社によって完全に操られている」という決定論的思考に陥りやすく、現実の政治課題や政策論争をすべて陰謀のせいに帰結させてしまう人。
・SNSの切り抜き動画や扇情的な見出しを鵜呑みにし、確かなニュースソース(公的機関の発表や一次報道)によるファクトチェックを行わない人。
政治とは本来、有権者の一票と現実的な政策論争によって築かれるものです。「予言されているから彼が総理になる」「裏で操られているから日本は衰退する」といったオカルト的運命論に思考を委ねることは、市民としての主体的な判断を放棄することと同義です。