映画『駐在さんと僕らの700日戦争』を語る上で欠かせない最大の関心事が、「劇中の出来事は果たしてどこまで実話なのか」という疑問です。本作のルーツは、2006年にインターネット上のブログサービス「FC2ブログ」で連載が始まった、原作者・くろわっさん氏による半自伝的ウェブ小説にあります。
当時、ブログランキングで1位を独走し、累計数千万アクセスを記録したモンスターコンテンツでした。作者自身の高校時代(1970年代末期)の記憶をベースに綴られたこの物語は、山形県上山市周辺が実際の舞台とされています。主人公のママチャリをはじめ、ケンカの強い西条、秀才のグレート井上、食いしん坊の千葉、女装もこなす後輩ジェミーといった個性豊かな仲間たちには、いずれも実在の同級生モデルが存在します。
関係者の手記や当時のインタビューによると、自転車のスピード違反を取り締まられた腹いせに駐在所へ嫌がらせを仕掛けたり、大人気ない駐在さんがトラップを仕返してきたりといった日常的な小競り合いは、驚くべきことに8割方実話ベースとして語られています。駐在さんが仕掛ける容赦ない報復や、自転車通学の高校生が繰り広げた知恵比べの数々は、当時の田舎町で実際に起きていた日常の延長線上にありました。
一方で、映画のクライマックスを飾る「病院に入院している少女のために打ち上げ花火を強行する大作戦」や、警察組織を巻き込んだ大規模なチェイス劇などは、小説化および映画化の過程で読者・観客のカタルシスを最大化するために生み出されたフィクション(創作)の要素が色濃く反映されています。日常のリアルな悪ガキのエピソードに、極上のエンターテインメント小説としてのドラマ性を肉付けしたことこそが、本作が爆発的な共感を呼んだ要因です。