本作の恐ろしさは、怪物の襲撃や凄惨なスプラッター描写そのものにあるのではない。主人公・前原圭一の視点を通して描かれる「主観」が、少しずつ、しかし確実に歪んでいく過程にこそある。昨日まで笑い合っていた仲間たちが、何かを隠しているのではないか。自分を陥れようとしているのではないか。一度芽生えた疑念は、まるで脳内を侵食するウイルスのごとく増殖し、周囲のすべての言動を「敵意」へと変換していく。
読者は圭一の目を通じて世界を見るため、彼のパニックと狂気に完全に同調せざるを得ない。この徹底した主観記述のトリックこそが、プレイヤーを逃げ場のない精神的閉塞感へと追い詰める最大の要因だ。真実と妄想の境界線が曖昧になる感覚は、今読んでも全く色褪せない。