建築史において特筆すべきは、館長をも務めた建築家・青木淳と西澤徹夫による改修設計の鮮やかさです。昭和初期の和洋折衷を象徴する「帝冠様式(銅板葺きの和風屋根を載せた洋風建築)」の外観を損なうことなく、いかにして21世紀の開かれた美術館へと再構成するかが最大の挑戦でした。
その答えが、本館正面の広場を緩やかに掘り下げ、地階部分に新設されたガラス張りのエントランス空間、通称「ガラス・リボン」です。従来は重厚な石段を登って入館していた導線を大胆に変更し、岡崎公園の地盤面から滑らかに地下へと人を引き込むスロープを形成しました。地上からは歴史的な本館ファサードがそのまま浮き上がって見え、地下に入ると光あふれる現代的なロビーが広がる構造は、保存と刷新の境界線を極限まで洗練させた設計として日本建築学会賞をはじめ数多くの栄誉に輝いています。
さらに、かつて大陳列室と呼ばれた吹き抜けの中庭にはガラスの大屋根が架けられ、光庭「光の広間」として屋内化されました。また、敷地北東側には現代美術の大型インスタレーションに対応可能な新館「東山キューブ」が増築され、天高5メートルの無柱空間と最先端の展示・照明設備が整えられました。重厚な近代美術からコンテンポラリーアートまでを同一敷地内でシームレスに体験できるダイナミズムは、青木淳らの緻密な空間ディレクションの賜物といえます。