骨折治療において患者と医療従事者の間で最も大きな認識のズレが生じやすいのが、「全治と完治の違い」です。
医療用語としての「全治(骨癒合)」は、レントゲン上で仮骨が十分に形成され、骨の連続性が保たれて日常生活での軽度な負荷に耐えられる状態を指します。一方、患者が実感として求める「完治」とは、折れる前と同等の関節可動域を取り戻し、痛みや腫れがなく、スポーツや重労働などの最大負荷をかけられる状態を指します。
多くの人が「ギプス固定期間が終われば自由に動かせる」と錯覚しがちですが、実際には固定具を外した瞬間こそが本格的なリハビリの開始合図です。数週間にわたってギプス内で関節を動かさないでいると、周囲の靭帯や関節包が線維化して固まる「関節拘縮(こうしゅく)」が発生し、筋肉は急速に萎縮します。手首骨折リハビリ期間や足首の免荷明けリハビリにおいて、硬縮した関節を徐々に広げ、落ちた筋力を再構築するプロセスには、骨がくっつくのと同等以上の期間が必要となります。