現在、大半の歯科医院で一次処置として用いられているのが、毎秒数万回という微細振動で歯石を粉砕・剥離する「超音波スケーラー」です。効率的に歯石を洗い流せる利点がある一方、特有の高周波振動と発熱を抑える注水が、露出した象牙質に触れることで超音波スケーラーの痛みを誘発します。「キーン」という金属音に対する心理的緊張も相まって、痛みの感受性をさらに跳ね上げる結果となります。
特に処置が過酷を極めるのが、歯肉の溝深く(4ミリ以上の歯周ポケット)に沈着した黒褐色の「縁下歯石」を除去する局面です。血液成分を含んで強固に歯根面へこびりついた縁下歯石は、目視が困難な深いポケット内を手用スケーラーなどで手探り掻爬(そうは)する「ルートプレーニング(SRP)」と呼ばれる専門処置を要します。
重度に進行した歯周病では、歯根を取り巻く歯槽骨が溶け、ポケット底部は潰瘍化した生々しい組織に覆われています。この深部へ金属器具を差し込み、細菌に汚染されたセメント質ごと削り取る処置は、無麻酔で行えば拷問に等しい苦痛を伴います。そのため、重度歯周病のSRPにおいては局所麻酔の併用が必須の手順とされ、術後の鈍痛に対してはルートプレーニング後の痛み止め(ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなど)を適切に服用する管理体制が確立されています。