トガを脱ぎ捨て、機能美の極限を追求した集団がローマ軍団兵(レギオン)でした。彼らが身につけていたのは、活動性を極限まで高めた短丈のウールチュニックと、重装歩兵用の鎧です。
チュニックの色については、長年「全員が鮮烈な赤(マダー染め)を着ていた」とハリウッド映画などで描写されてきましたが、近年の軍事考古学の見解では、未漂白の生成り色(オフホワイト)や黄褐色も広く混在していたことが判明しています。士官クラスや儀礼の場では威嚇効果と指揮識別を兼ねた鮮明な赤が選ばれましたが、過酷な前線では実利が優先されました。
甲冑の進化史もまた劇的です。共和政期にはケルト起源のしなやかな「ロリカ・ハマタ(鎖帷子)」が主流でしたが、紀元1世紀頃には映画でもおなじみの「ロリカ・セグメンタタ(分割板金鎧)」が登場します。湾曲させた鉄板を革紐と真鍮の金具で連結したこの鎧は、鋭利な刃の斬撃を防ぎつつ、兵士の柔軟な上半身のひねりを妨げない革命的な工業デザインでした。
足元を支えたのは、靴底に数十本の鉄鋲を打ち込んだ頑丈な革製軍靴「カリガ(caliga)」です。泥濘や険しい岩場を行軍するグリップ力を生み出し、1日30キロメートル以上の強行軍を可能にしました。皇帝カリグラのあだ名が「小さな軍靴」に由来することは有名ですが、ローマ軍の服装は「帝国を物理的に拡大するための工業製品」として徹底的に洗練されていたのです。