敬語に関するネット上の言説には、過剰なルール付けや誤解に基づいた極論が少なくありません。「承りました」に関しても、実務を停滞させる典型的な思い込みがいくつか見受けられます。
代表的な誤解が、「『承りました』は接客業専用の言葉であり、オフィスワークでは使ってはいけない」という言説です。これは明確な誤りです。電話対応で不在の同僚宛ての伝言を預かる際、「私、〇〇が確かに承りました」と告げるフレーズは、外部に対する企業の誠実さを示す最高峰のビジネス表現として機能します。担当者が不在であっても、組織として責任を持って情報を受け取ったという安心感を社外に提示できる強みがあります。
もう一つの注意すべき盲点は、敬意を高めようとするあまり発生する「重複表現・不自然な敬語」です。例えば、「ご注文の件、ご承知承りました」といった言い回しは、意味の重複した破綻表現です。また、「了解いたしました」という言葉も、「了解」自体が同等以下に対する言葉であるため、「いたしました」を付与しても不快感を抱く層が一定数(約30〜40%)残存します。リスクを避ける意味でも、目上に対しては「かしこまりました」か「承知いたしました」の二者択一に絞るのが賢明です。
言い換えや類語として用いられる「拝承(はいしょう)いたしました」は、文章語(書き言葉)としては格調高いものの、現代のチャットツールや日常的なメールでは過度に形式張った印象を与えかねません。相手の企業文化や好まれる文体を観察しながら、柔軟にトーンを合わせる視点が求められます。