熱狂の裏で、長年視聴者を悩ませてきたのが試合の白熱に伴うタイムテーブルの崩落です。SNSやネット掲示板、知恵袋には毎シーズンのように悲痛な叫びが書き込まれます。「最終回の攻防で一番いい場面なのにサブチャンネルに切り替わって見失った」「野球の延長で後続のドラマが50分繰り下がり、録画予約の末尾が切れて結末が分からなかった」。
放送局側が直面する野球中継延長理由には、技術的・法的な厳格な制約が絡んでいます。地上デジタル放送のマスターコントロール室(主調整室)では、1秒の狂いも許されないプログラム運行が行われています。中継が21時を越えて延長戦にもつれ込んだ場合、局が取り得る選択肢は主に以下の3つに分かれます。
- 全編メインチャンネル延長(最大21時54分まで等):後続の全国ニュースや看板ドラマの開始時刻をそのままスライドさせる措置。キー局との事前協定が必要であり、全国ネット番組の枠を潰すことは原則できないため、延長枠には厳格なタイムリミットが設定されます。
- マルチ編成(サブチャンネル切り替え):031チャンネルから032チャンネル(RCCの場合)などへ映像信号を分岐させ、定時番組をメインで放送しながら中継を継続する手法。ただし画質が標準画質(SD)へ低下し、古いテレビや録画機器では自動追従が機能しないトラブルが発生します。
- 中継打ち切り:定時番組の契約関係や生放送ニュースの送出都合により、試合途中であっても放送を強制終了する苦渋の決断。局の視聴者センターには放送終了直後から抗議電話が殺到することになります。
番組送出の現場ディレクターは、試合のイニング進行速度、投手の交代ペース、残りの放送枠をミリ秒単位で睨み合いながら、延長かサブ切り替えかのボタンを押します。広島のテレビマンにとって、野球中継の延長対応は技術的にも精神的にも極限のオペレーションを強いられる瞬間なのです。