合唱コンクールの選曲シーズンになると、全国の学級で必ずと言っていいほど候補に挙がる『時を超えて』。教育現場における客観的データと指導実態を照らし合わせると、この楽曲が選ばれ続ける理由には極めて合理的な音楽的・教育的根拠が存在します。
上の表が示す通り、『時を超えて』の最大の強みは「変声期の男子に対する配慮」と「劇的なクライマックス」の両立にあります。中学校の合唱指導において最大の壁となるのは、男子生徒の声変わりです。声が出にくくなった男子が合唱への意欲を失ってしまうケースは少なくありません。しかし栂野氏は、男声パートに過度な高音を要求せず、主旋律と対等に掛け合うカウンターメロディを与えることで、男子のプライドと意欲を巧みに引き出しています。
さらに、卒業式の場面では歌詞の持つ「別れと継承」という文脈が参列した保護者や教員の涙腺を直撃します。単なる学内行事の枠を飛び越え、コミュニティ全体が感動を共有できる普遍的な祝祭空間を作り出す力が、この楽曲には宿っています。