長野駅でおやきを買い求める際、ほぼすべての人が直面するのが「いろは堂」と「小川の庄 MIDORI長野店」の二者択一です。駅ビル「MIDORI長野」の2階、信州おみやげ参道「ORAHO」に隣接して並ぶ両店ですが、その製法と味の設計思想には明確な境界線が存在します。
鬼無里(きなさ)に本店を構える老舗「いろは堂」の代名詞は、独自の「揚げ焼き」製法です。小麦粉とそば粉を練り上げた極薄の生地でたっぷりの具材を包み込み、一度油でサッと揚げたあとに高温のオーブンでじっくり焼き上げます。表面はサクッと香ばしく、内側はもちもちとした独特の心地よい食感を生み出しています。名物の「ねぎみそ」や「野沢菜」は油のコクと味噌の風味が絶妙に絡み合い、軽食としてはもちろん、クラフトビールや地酒のつまみとしても圧倒的な支持を集めています。
対する小川村発祥の「小川の庄」は、北信濃の囲炉裏端で受け継がれてきた伝統的な「縄文おやき」を忠実に再現しています。生地はふっくらとして厚みがあり、素朴で優しい小麦の甘みが前面に出る蒸し焼きスタイルです。自慢の「野沢菜」や「あずき」「かぼちゃ」は、どこか懐かしいおばあちゃんの味を想起させる優しい甘辛仕立てで、濃すぎる調味料に頼らない素材本来の滋味が舌の上に広がります。
現地での取材やWeb上の口コミ・評判を分析すると、若い世代や男性客、お酒好きからは「具がぎっしりでパンチがある」といろは堂が絶賛される一方、年配層や伝統的な田舎料理の素朴さを求める旅行者からは「小川の庄のふんわりした皮とホッとする塩梅が一番落ち着く」と評されており、支持層の棲み分けが見事に成立しています。