「夜なら1人前2万〜3万円する最高ランクの松阪牛が、昼なら数千円で食べられる」という噂を耳にしたことがある人は少なくないはずです。この極端な価格差は、観光客向けの単なる廉価版サービスではなく、松阪特有の食肉流通システムに明確な理由が存在します。
最大の要因は、市内に点灯する多くの老舗や人気店が精肉卸・直営精肉店を併設している一頭買いモデルを採用している点です。サーロインやヒレといった贈答用・最高級部位は首都圏の高級ホテルやディナーコースへ出荷される一方、モモやカタ、切り落とし、カルビ周り、新鮮なホルモンは地元店舗のランチメニューへ優先的に配分されます。中抜きコストを排除し、牛全体を余すところなく使い切るサイクルが確立されているからこそ、松阪牛安く食べる理由としての確固たる経済的根拠が成り立っています。
取材で見えてきたのは、昼限定のハンバーグや牛丼、焼肉定食に未経産処女牛の上質な脂(融点が低く不飽和脂肪酸が豊富)が惜しみなく練り込まれている事実です。特別なディナーと全く同等の血統・肥育管理を経た肉の旨味を、日常の価格帯で味わえる点こそが、松阪牛ランチおすすめと称される最大の価値といえます。