サンボマスター通算14枚目のシングルとして2010年2月24日に世に放たれた「できっこないをやらなくちゃ」は、順風満帆な環境から生まれたわけではありませんでした。当時、日産自動車「セレナ」のCMソングとしてタイアップのオファーを受けたバンドは、「家族や挑戦する人の背中を押す力強い楽曲」という明確なオーダーを突きつけられていました。
しかし、当時のインタビューや音楽関係者の証言によると、作詞・作曲を手掛けたボーカル&ギターの山口隆(サンボマスター)は、極度の創作スランプとプレッシャーの渦中にありました。「誰かを応援する前に、自分自身が前に進めなくなっていた」と後に述懐している通り、机に向かっては書き直しを繰り返す日々が続いたといいます。そんな極限状態のなか、山口が導き出した答えは、タイアップ用の当たり障りのない応援フレーズではなく、「今、目の前でうなだれている自分自身と、同じように打ちのめされている誰か」に向けた剥き出しの叫びでした。
完成した歌詞を初めて目にした際、山口自身は「あまりにストレートすぎて、ダサいのではないか」「こんな赤裸々な言葉を吐き出して受け入れられるのか」と激しく逡巡したと明かしています。しかし、ベースの近藤洋一、ドラムの木内泰史がその熱量に共鳴し、スタジオで一丸となって音を鳴らした瞬間、小細工なしの魂を揺さぶるアンセムへと昇華しました。この飾らない誕生秘話こそが、楽曲の芯に強靭な説得力を与えています。