永山裕子氏の類まれなる才能の根底には、徹底的に叩き込まれたアカデミックな基礎力があります。1963年東京生まれの彼女は、日本最高峰の美術教育機関である東京藝術大学美術学部油画科に進学。在学中には極めて優秀な学生にのみ贈られる「安宅賞」および「大橋賞」を受賞し、首席で卒業を果たしました。その後、同大学大学院美術研究科(榎倉康二研究室)を修了しています。
油画の最高峰で学んだ彼女が、のちに主たる表現媒体として選んだのが「透明水彩」でした。油彩画が「絵具を塗り重ねて構築する足し算の美」であるのに対し、透明水彩は一度置いた筆跡の修正が極めて難しく、紙の白さを活かす「引き算とスピードの美」が求められます。藝大仕込みの強靭なデッサン力と空間構成力があるからこそ、一見自由奔放に見える水彩の滲み(にじみ)が、崩れることなく完璧な骨格を保ち続けるのです。
武蔵野美術大学油絵学科の非常勤講師などを歴任しながら、国内外での個展やワークショップを精力的に展開。単なる技法の上手さにとどまらず、モチーフの本質を抉り出すような生命感溢れる作風によって、名実ともに日本を代表する水彩画のトップランナーとしての地位を確立しました。