日本が世界に誇る最大の強みは、繊細な熱制御と独自のハンドリング技術を要する微小重力実験にある。とりわけ半導体分野での成果は目覚ましい。次世代パワー半導体材料として期待されるワイドバンドギャップ半導体の高品質結晶化実験では、地上では不可能な欠陥密度の極小化に成功したというデータが関係者を沸かせている。
創薬分野でも進展は著しい。筋萎縮症やアルツハイマー病に関わるタンパク質の三次元構造解析において、地上実験では解明できなかった分子結合の詳細が次々と浮き彫りになっている。重力のない環境下でのみ自己組織化する幹細胞スフェロイドの培養技術は、再生医療の臨床応用を大幅に前倒しする可能性を秘めている。
宇宙はもはや冒険の舞台ではない。極限状態を利用した、地球上の産業競争力を底上げするための先制投資の場なのだ。