高校時代、全日本ユース合宿に招集された侑と肩を並べ、誰もが「二人揃って日本のバレーボール界を背負って立つ」と信じて疑わなかった宮兄弟。しかし、物語の最終章において明かされた宮治の選択は、「高校を最後にバレーボールから完全に身を引く」という驚くべきものでした。
多くの読者が抱いた疑問が、「なぜ実力がありながら治はバレーをやめたのか」という点です。怪我による挫折なのか、あるいは侑との才能の差に絶望したのか。しかし、原作で明かされた真相はそのような悲劇的な理由ではありませんでした。治自身が下した決断の根底にあったのは、極めて純粋で前向きな「美味い飯への情熱」でした。
春高で烏野に惜敗した直後、治は侑に向かって「俺は高校でバレーをやめる」「飯食うて生きていく」と告げます。激昂した侑は「逃げるんか」と詰め寄りますが、治の瞳に迷いはありませんでした。治にとってバレーボールは高校生活のすべてを捧げるほど楽しいものでしたが、それ以上に「美味い飯を食うこと、そして人に美味い飯を食わせること」こそが生涯をかけて追求したい生き甲斐だったのです。
その際、治が侑に投げかけた言葉は作品屈指の名言として知られています。
「侑、お前が80歳になって死ぬ時、俺の方が絶対幸せやったって言わせてみせるわ」
この誓い通り、高校卒業後の治は飲食の道へと飛び込み、試行錯誤の末に念願のおにぎり専門店「おにぎり宮」を開業します。厳選された米と具材、丹精込めて握られたおにぎりは瞬く間に評判を呼び、東京をはじめ複数店舗を展開する人気実業家へと登り詰めました。バレーへの未練を断ち切るのではなく、「別の頂点」を目指して自らの足で歩み始めた治の姿は、多くの読者に深い感動を与えました。