福知山線脱線事故の真相|日勤教育の暗部と「祈りの杜」現在地

福知山線脱線事故の真相|日勤教育の暗部と「祈りの杜」現在地

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事故の直接的な引き金となったのは、事故現場の直前に停車した伊丹駅でのミスでした。当時23歳だった運転士は、伊丹駅の停止位置を約70メートル大幅にオーバーランし、列車を後退させて客扱いを行ったことで約1分30秒の運行遅れを生じさせていました。

列車に搭載されていたボイスレコーダー記録および車掌と総合指令所との通話記録からは、運転士が極限のパニック状態に陥っていた緊迫の一部始終が克明に残されています。伊丹駅を発車後、運転士は車掌に対し、オーバーランの距離を短く虚偽報告してくれないかと車内電話(インターホン)で懇願していました。

「まけてくれへんか(短めに報告してくれないか)」――若き運転士の頭の中は、運転指令所にオーバーランが発覚することへの極度の恐怖で占められていました。発車後も運転席の無線スピーカーから流れる車掌と輸送指令のやりとりに全神経を奪われ、前方の線路状況や信号現示、そして自列車の速度計から完全に注意が逸脱していました。ブレーキ弁に手が伸びたのはカーブ進入のわずか数秒前、非常ブレーキが作動したのはすでに転覆が始まっていた瞬間であり、物理的に減速が間に合わない絶望的な状況に陥っていたのです。

伊藤 翔太
著者

伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。