ネット上のコミュニティやSNSで今なお囁かれる「打ち切り説」ですが、出版業界の動向や『週刊少年マガジン』本誌の掲載データを精査すると、その噂が客観的根拠を欠いた憶測に過ぎないことが明白になります。
では、なぜこれほど強固な「打ち切り疑惑」が浮上したのか。その最大の引き金は、単行本第20巻から第22巻(最終巻)にかけての急激なプロット加速にありました。作中のハイライトであった「芸華祭編」や「TGC(東京ガールズコレクション)編」が極めて緻密に、服の繊維一本に至るまで心理戦を交えて描かれていたのに対し、後半のブランド立ち上げからパリコレ挑戦への道程は、劇的なタイムスキップとダイジェスト形式を多用して進行しました。
この速度変化に直面した読者が「掲載順の悪化による打ち切り宣告を受け、急ピッチで畳んだのではないか」と受け止めたことが噂の起点です。しかし、当時の編集部発表や掲載順位、単行本のセールス推移を見れば、打ち切りとは対極の立ち位置にあったことが証明されます。
本作は単行本累計300万部を突破し、2018年には「マンガ大賞」第6位への選出、第44回講談社漫画賞少年部門へのノミネートなど、マガジン編集部を代表する看板作品として重用されていました。打ち切りの判断基準となるアンケート順位の急落やコミックス売上の壊滅といった兆候は一切見当たりません。
原作者の猪ノ谷言葉先生が描きたかった核心は、「持たざる者」としてスタートした都村育人と藤戸千雪が、あらゆる障壁を突破して世界の頂点であるパリコレの舞台に立つまでの物語です。物語のゴールテープがあらかじめ明確に設定されていたからこそ、無用な引き伸ばしを排し、作家本来の構成プランに従って完結を迎えたというのが真実です。