画面に圧倒的なダイナミズムを宿らせるための第一歩は、重心を意図的に支持基底面(足を置いている範囲)から外すことです。前のめりに倒れ込む、あるいは後方の反動に耐えるといった極端な重心移動を描くことで、鑑賞者の脳は「次の瞬間に身体が倒れる」と無意識に予知し、静止画の中に時間の流れを感じ取ります。これこそがイラストの躍動感を引き出すコツの根幹です。
この重心操作を論理的に体系化した技術が、古典美術から受け継がれるコントラポスト(Contrapposto)のイラスト技法です。コントラポストとは、体重の大部分を一歩の足にかけることで、骨盤の傾きと肩の傾きを意図的に反発(クロス)させる構図技法を指します。骨盤が右上がりに傾いたとき、身体はバランスを取るために肩のラインを左上がりに傾けます。この「傾きのねじれ」によって、体幹にゆるやかなS字の曲線(ライン・オブ・アクション)が生まれ、単なる立ち姿であっても潜在的な動きの気配を帯びるようになります。
さらに激しいイラストの躍動感あふれるポーズを構築する際は、このコントラポストをさらに誇張し、「くの字」や「弓なり」を描くように背骨を撓(たわ)ませます。背骨のしなりが腰へ伝わり、腰から大腿部、そして足先へと運動エネルギーが抜けていく「力の一筆書き」を意識してラフを引くことで、固まっていた四肢が一気に解放され、しなやかで力強いアクションへと昇華されます。