「がん細胞だけが破裂する」――このSFのような治療法を現実のものとしたのが、アメリカ国立がん研究所(NCI)の小林久隆主任研究員らが開発した「光免疫療法(アルミノックス治療)」である。特定のがん細胞表面に結合する抗体に近赤外線感受性物質を結合させ、患部に近赤外光を照射することで、がん細胞の細胞膜を一瞬にして破壊する。
周囲の正常な血管や神経、健康な組織へのダメージは極めて限定的だ。治療翌日に患者が軽食を口にする光景は、従来の抗がん剤治療の過酷な副作用を知る者にとって衝撃的ですらある。頭頸部がんを皮切りに適応拡大に向けた治験が急ピッチで進んでおり、体の奥深くにある病巣に対しても極細の光ファイバー針を用いて照射する技術開発が進む。物理現象と生化学を融合させたこの破壊的イノベーションは、局所制御の概念を根底から覆した。