サツキとメイの家が鑑賞者を惹きつけてやまない最大の理由は、室内の家具や生活用品に直接触れられる点にあります。タンスの引き出しを開ければ季節ごとの衣類が収められており、台所の水瓶には実際に汲み上げ可能な井戸ポンプが設置されているなど、生活の実感が細部にまで宿っています。
ファンの視線が集中するのが、洋風の外観が印象的な「お父さんの書斎」です。机の上には考古学の専門書や原稿用紙、散乱した書類が当時の乱雑さそのままに積み上げられています。棚の奥や背表紙のタイトル、引き出しの文房具に隠された小ネタは、制作陣がどれほど緻密に時代背景を考証したかを雄弁に物語る隠し要素となっています。
さらに見逃せないのが、メイがどんぐりを拾いながら探検した「まっくろくろすけが潜む隠し階段」の存在です。普段は立ち入りが制限されている薄暗い階段の吹き抜けを見上げると、作中で黒い生き物がササッと闇の中へ駆け上がっていった情景が自然と脳裏に浮かんできます。隙間風の音や木の匂いまでもが再現された空間は、映画のスクリーンを突き破って物語の内側へ入り込んだような錯覚を覚えます。