現在の鰻業界を語る上で外せないのが、圧倒的な二極化現象である。創業数百年を誇る老舗料亭が守り続ける「蒸し」と「焼き」の美学。紀州備長炭の香ばしい煙と、受け継がれてきた熟成タレが織りなす一品は、まさに芸術の域に達している。当然ながら、相応の価格と静謐な空間がそこには存在する。
その一方で、近年爆発的な勢いで店舗を増やしているのが、手頃な価格でボリューム満点の鰻重を提供する新世代の専門店だ。徹底したオペレーションの簡略化と専用機器の導入により、従来の半額近い価格で満足度の高い蒲焼を実現した。日常のランチとして鰻を楽しむ層と、至高のひとときを求める層。双方が共存することで、日本の鰻市場はかつてない広がりを見せている。