なぜ、一見して危険とわかるような手技に、母親たちは我が子を預けてしまったのでしょうか。当時の評判と実態を丹念に掘り下げると、現代の保護者も陥りかねない巧妙な心理的トラップが浮かび上がってきます。
姫川元代表が主宰していた「子育て支援協会」は、公的な認証を受ける「NPO法人」の肩書を前面に押し出していました。これにより、初めて育児に直面して戸惑う親たちに対して「公的に認められた安心な団体」という強い錯覚を与えていたのです。
ネット上の掲示板やSNS、知恵袋などで展開されていた評判は、極端な二極化を見せていました。実際に体験した一部の親からは「赤ちゃんが泣き叫んで顔が紫色になっていた」「見ていて恐怖を感じて途中で止めた」という悲鳴が上がっていた一方、信奉者コミュニティでは正反対の言説が支配していました。
「施術中に泣くのは、身体の歪みが治ろうと頑張っている証拠」「激しく泣いた後はぐっすり眠るから効果がある」といった強烈な認知の刷り込みです。泣き叫ぶ我が子を見て動揺する母親に対し、主宰者側は「お母さんの不安が赤ちゃんに伝わっている」「今ここで施術をやめたら一生発達が遅れる」と精神的な揺さぶりをかけていました。
核家族化が進み、周囲に相談できる相手がいない「孤立育児(ワンオペ育児)」の限界に達していた親ほど、「子どもの夜泣きを治したい」「発達を促してあげたい」という純粋な愛情ゆえに、この閉鎖的な心理誘導から抜け出せなくなっていたのです。