「適切な時期に実現を目指す」――外務省の記者会見で幾度となく繰り返されてきたこの外交辞令は、2026年の現場において完全な形骸化を見せています。習近平来日の延期理由として当初掲げられた感染症対策という理由はとっくに消滅しました。現在、来日を阻んでいるのは、両国間に横たわる構造的な安全保障上の対立と、国民感情の決定的な断絶です。
とりわけ決定打となったのが、東シナ海における現状変更の試みと台湾有事リスクの高まりです。尖閣諸島の日中外交をめぐる対立は先鋭化の一途をたどり、中国海警局の武装公船による領海侵入は常態化しました。さらに、反スパイ法の下で日本人ビジネス関係者や研究者が相次いで拘束される事態が続き、日本国内では対中不信が頂点に達しています。
外務省関係者は、オフレコを条件に現場の空気を次のように明かします。
「現在の状況下で習主席を日本に招けば、政府は国論を二分するどころか、政権そのものが吹き飛びかねない批判に晒されます。中国側にとっても、訪日して歓待を受けられず、抗議デモに囲まれるような事態は国家元首の威信に関わる。双方が『今は動かすべきではない』という暗黙の了解に縛られているのが、習近平来日中止のなぜを解く最大の鍵です」
公の場で見せる強気の外交姿勢とは裏腹に、事務方レベルでの実務協議は常に膠着しており、事態を好転させる決定打は見出せていません。