萬福寺を語る上で欠かせないもう一つの柱が、隠元禅師が日本へ伝えた中国風精進料理「普茶料理(ふちゃりょうり)」です。「普(あまね)く衆人に茶を供する」という意味を持つこの料理は、上下関係を排し、1つの円卓や角卓を4人で囲んで大皿料理を取り分ける独特のスタイルを持っています。
葛と植物油を巧みに使い、旬の野菜や豆類を魚や肉に見立てる「もどき料理(擬製料理)」の技法は、視覚的な驚きとともに深い滋味を与えてくれます。現在、萬福寺で普茶料理を堪能するには原則として3日前までの事前予約が必要です。季節ごとの厳選素材を活かしたコースは、一般的な精進料理の枠を超えた豊かな食文化体験として高い評価を得ています。
さらに近年、新たな風物詩として定着したのが「黄檗ランタンフェスティバル」です。広大な境内を数千個に及ぶ中国伝統の極彩色ランタンが照らし出す光景は、古刹の静寂と幻想的な灯りが融合した圧巻のエンターテインメントへと昇華されています。また、秋の紅葉シーズンにおけるライトアップでは、重厚な明朝建築のシルエットと鮮やかなモミジの紅葉が織りなす陰影美が、SNS世代からシニア層まで幅広い層の心を捉えています。