推古天皇の時代、隅田川で投網にかかった観音像を祀ったことから始まったとされる金龍山浅草寺。天台宗の時代を経て、現在は聖観音宗の総本山として独自の信仰体系を守り続けている。だが、その表玄関たる雷門(正式名称・風雷神門)の歩みは平坦ではなかった。
鎌倉時代に現在地へ移築されて以降、江戸の度重なる大火や戦乱によって門は幾度となく灰燼に帰した。特に幕末の慶応元年に焼失してからは、実に約95年間ものあいだ、雷門は「幻の門」となっていた時期がある。映画『男はつらいよ』の初期作や昭和中期の古写真に写る浅草の風景に、現在のような壮麗な門が存在しない期間があったことは、現代の参拝者には意外と知られていない事実だろう。