花畑牧場の軌跡を語る上で欠かせないのが、劇的な業態転換(ピボット)です。ピーク時に公称年商140億円を記録した同社ですが、ブーム崩壊後には売上が激減。青山や銀座の一等地に構えていた直営カフェや物販店は次々と閉鎖に追い込まれ、一時は倒産の危機すら囁かれました。
この絶体絶命の窮地を救ったのが、田中義剛が農学部出身の原点に立ち返って注力した「花畑牧場 チーズ工房」による業務用チーズ(BtoBビジネス)への全面シフトでした。個人の観光客やスイーツ好きを相手にするBtoC商売は流行に左右されやすい一方、ファミリーレストランやコンビニエンスストア向けの業務用食材は、一度採用されれば極めて安定的かつ継続的な大口需要が見込めます。
田中義剛は本場イタリアの手造り製法を徹底研究し、ブッラータ(巾着状のフレッシュチーズ)やラクレットチーズ、冷凍モッツァレラなどの量産化に日本で初めて本格成功しました。外食大手「サイゼリヤ」のメニューに採用されたことや、大手コンビニのチルドスイーツ・おつまみコーナーへのPB供給が決定打となり、同社の収益構造は劇的に改善したのです。
上記のデータが示す通り、売上規模自体は全盛期の半分程度ですが、営業利益率や事業の継続性という観点では現在の方が圧倒的に健全です。All Japan ナチュラルチーズコンテスト等で優秀な成績を収めるなど、品質面でも専門家筋から高い評価を獲得しており、実業家としての田中義剛の経営手腕はビジネス界で再評価されています。