2つの波が出会ったとき、劇的なドラマが生まれる。山と山が重なれば波は2倍の高さになり(強め合いの干渉)、山と谷が重なれば波は完全に消滅する(弱め合いの干渉)。この2つの波のタイミングのズレを「位相差」と呼ぶ。
音響工学における最大のヒット作であるアクティブ・ノイズキャンセリング技術は、この位相差を極限まで活用した典型例だ。マイクが外部の騒音を拾った瞬間、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)が騒音と位相がちょうど180度反転した逆位相の音波を生成し、耳元で衝突させる。波同士が打ち消し合い、静寂だけが残る。さらに電気電子工学の領域では、複数のアンテナから送信する電波の位相差を意図的にずらす「ビームフォーミング」技術が5Gや6G通信の基盤となっており、特定の端末に向けてピンポイントで高密度の電波を照射することを可能にしている。