新選組の影に隠れがちだが、寺本来の歴史的価値も見逃せない。平安時代に創建され、中興の祖である円覚上人によって広められた律宗の教えは、この地に深く根付いている。その象徴が、国指定の重要無形民俗文化財である「壬生狂言(大念仏狂言)」だ。
一切の台詞を排し、鉦(かね)と太鼓、笛の音に合わせて仮面をつけた演者がパントマイムのように演じる無言劇。仏教の教えを分かりやすく庶民へ伝えるために始まったこの伝統芸能は、今も春と秋、そして節分に公開されている。仮面の誇張された表情とユーモラスな所作の奥には、現世の苦しみを笑い飛ばし、極楽往生を願った人々の切実な祈りが宿る。境内を歩けば、勇猛な武士たちの気配のすぐ隣に、中世から続く庶民信仰の息吹がしっかりと息づいていることに気づくはずだ。