カタツムリの歯は、人間のように歯茎に独立して生えているわけではありません。口の奥にある舌のような筋肉質の帯の上に、キチン質でできた極小の歯が無数に並んだ構造をしています。この器官を専門用語で歯舌(しぜつ / radula)と呼びます。
電子顕微鏡で拡大観察すると、歯舌の表面には鋭利なノコギリの刃やサメの歯を極小化したような突起が、規則正しい列を成して敷き詰められている様子が確認できます。カタツムリはこの歯舌を前後にリズミカルに動かし、食事対象を「噛み砕く」のではなく、「おろし金」のように表面を削り取って体内に取り込みます。
さらに驚くべきは、その脅威的な生え変わりサイクルです。先端の歯が削る動作によって摩耗すると、後方の組織から新しい歯が次々と生成され、ベルトコンベアのように前方へと送り出されます。カタツムリは生涯を通じて歯を失うことなく、常に鋭利な状態を維持し続ける自己修復システムを備えているのです。