伊藤潤二氏の画業30周年記念作品として『ネムキプラス』に掲載された『恐怖の重層』は、発表直後から漫画関係者やコアな読者の間で絶大な反響を呼びました。現在は短編集『伊藤潤二傑作集 11 潰談』をはじめとする各種単行本や、各電子書籍プラットフォームでの配信によって幅広く読まれています。
本作の舞台となるのは、古代の母神信仰や地層の重なりが調査されている発掘現場の街です。地層が太古の記憶をそのまま閉じ込めているように、「人間の肉体も過去の自分が内側に何層にも重なって存在している」という異常な呪異が発覚することから物語が幕を開けます。この超現実的な設定を、緻密極まる筆致で視覚化する伊藤潤二氏の圧倒的な画力こそが、読者を一瞬で悪夢へと引きずり込む最大の要因です。