しかし、栄華の陰で経営方針をめぐる路線対立が表面化する。情熱的な開発優先主義を貫く次男・森稔に対し、三男の森章は財務の健全性とリスク管理を極めて重んじるリアリストであった。バブル崩壊後の過剰債務に対する危機感や、莫大な投資を伴う再開発プロジェクトへの価値観のズレは、次第に兄弟間の決定的な亀裂を生んでいく。
1999年、グループはついに分裂。「森ビル株式会社」を森稔が率い、「森トラスト株式会社」を森章が率いる二大体制へ移行した。兄弟がそれぞれの信念のもとで別々の道を歩み始めたこの出来事は、同族企業研究における歴史的転換点として今なお語り継がれている。