客の八割が注文する看板メニュー、それが鉄板から弾ける音とともに運ばれてくる「特製焼肉定食」だ。
肉厚な豚肩ロースに絡むのは、漆黒とも言える深みを持った秘伝のタレ。ニンニクと生姜の鮮烈なパンチの奥から、まろやかな甘みと芳醇な発酵のコクが押し寄せる。このタレのベースは、創業時から継ぎ足しで使われている甕(かめ)の熟成醤油だ。リンゴとタマネギをすりおろし、複数のスパイスとともに数日間寝かせることで、角のない丸みを生み出す。火加減ひとつで風味が飛んでしまうため、仕込みは毎朝、店主が一人きりで厨房にこもって行う。
付け合わせのキャベツにタレが染み込み、熱々の白米に乗せて頬張れば、過酷な深夜走行の疲弊が一気に吹き飛ぶ。胃袋を満たすだけでなく、芯から力をみなぎらせる味。徹底した手仕事の積み重ねが、半世紀にわたり舌の肥えた長距離ドライバーたちを唸らせてきた正体だ。