寺の草創は奈良時代、大和の霊木から二体の仏像を彫り上げた徳道上人の伝説に遡る。一体は奈良の初瀬に祀られ、もう一体が「有縁の地にて人々を救え」と祈りを込めて海へと流された。それが相模国の三浦半島に漂着し、鎌倉の地に迎え入れられたのが鎌倉長谷寺の始まりと伝わる。
本堂の奥深くに聳え立つ十一面観世音菩薩は、高さ9メートルを超える日本最大級の木彫仏だ。あらゆる方角を見渡し、人々の苦悩を聞き逃さないとされる十一の顔貌。金箔が放つ鈍い輝きは、中世から戦国、そして近現代に至る戦火や災禍を乗り越えてきた信仰の重みそのものを物語っている。