ロアボールジョイントブーツの破損は、リフトアップして下回りを見上げない限りドライバーが視覚的に気付くことは難しい。しかし、車輪内部では確実に致命的なサインが発信されている。日常の運転において以下の兆候を感じ取った場合、すでにジョイント内部の崩壊が始まっている可能性が高い。
最も典型的な初期警告が、足回りからの異音である。歩道の段差を乗り越えた際や、舗装の荒れたアスファルトを通過する際、車輪の奥深くから「コトコト」「ゴトゴト」という鈍い打撃音が響く場合、内部摩耗によるガタツキが発生している疑いが濃厚だ。さらに金属疲労と油膜切れが悪化すると、ステアリングを低速で大きく据え切りした際に「ギシギシ」「パキパキ」という乾いた金属摩擦音が車内に届くようになる。
もう一つの明確なサインは、ホイール周辺の異様な汚れだ。洗車時にアルミホイールの内側やタイヤハウスの樹脂カバー、あるいはブレーキキャリパーの背後を覗き込んだ際、黒褐色で粘り気の強いヘドロ状の油脂が付着していないだろうか。これは遠心力で飛散したジョイント内部のリチウム系極圧グリスである。油分が広範囲に散っている場合、ブーツの裂け目はすでに数センチ規模に達していると見て間違いない。
プロの点検現場では、車両をリフトで持ち上げてタイヤを浮かせ、タイヤの上下(12時と6時の位置)を両手で力強く揺さぶったり、ロアアームとナックルの隙間にバールを差し込んでテコの原理でこじたりすることで、ミリ単位の軸方向ガタを検査する。素手による揺さぶりで僅かでも「カクッ」と動く感触があるならば、もはやブーツ交換だけで済む猶予は残されていない。