ネット上で定期的にバズる「東京に原発を」論争には、多くの技術的・制度的誤解が入り混じっています。主要な誤解をファクトチェックで是正します。
誤解1:「小型モジュール炉(SMR)なら東京湾沿岸に造れるのではないか?」
【真相】:依然として立地審査指針をクリアできない。
近年開発が進む次世代の小型原発「SMR」は、従来の大型炉に比べて出力が小さく、自然対流による受動的安全性を備えているため、冷却水消費量も少なくて済みます。しかし、いかにSMRであっても核燃料を使用する以上、万一の事故時に周囲数百メートル〜数キロの「非居住区域」や「低人口地帯」を確保する必要があります。東京23区や湾岸埋立地のような人口過密地域に設置することは、現在の安全規制基準のもとでは認められません。
誤解2:「送電ロスが莫大だから東京に造らない電力会社は無能だ」
【真相】:500kV超高圧送電線のロスはわずか3〜5%程度に抑えられている。
「新潟や福島から東京に電気を送ると半分くらい消えてしまう」と思い込んでいる人が少なくありません。しかし、東京電力が整備した新新潟幹線などの500kV超高圧送電網は極めて優秀であり、300キロメートル離れた場所から送電してもロスは数パーセントに過ぎません。都市部での天文学的な土地取得費用や防災対策コストを考えれば、送電ロスによる損失は経済的に十分許容範囲内というのが送配電工学の冷徹な現実です。