インターネットカルチャーにおいて、テレビ東京を語る上で欠かせないのが、重大事件や大災害の発生時にも通常通りアニメや旅番組を放送し続けるとされる「テレ東伝説」です。SNS上では「テレ東が通常放送を取りやめたら本当に地球滅亡の危機」「アニメを頑なに流し続ける最強のマイペース局」といったミームとして半ば神格化されてきました。
しかし、報道機関としての現場取材や編成局の運用実態を検証すると、この神話の背景にはネット上のイメージとは異なる現実的な事情が存在します。同局の関係者が過去のインタビューや社史で語っている通り、テレビ東京の報道ネットワーク(TXN)は系列局が全国6局(テレビ北海道、テレビ東京、テレビ愛知、テレビ大阪、テレビせとうち、TVQ九州放送)に限られており、取材拠点や人員の規模が他キー局と比べて極めてコンパクトです。
そのため、突発的な大ニュースが発生した際、他局のように即座に全国規模の生中継網を敷いて長時間の報道特番を維持することが物理的に困難な局面がありました。加えて、アニメ枠をはじめとするレギュラー番組には厳格なスポンサー契約や放送スケジュールの縛りが存在し、安易な放送休止は莫大な違約金や権利ビジネス上の損害を招くリスクを孕んでいます。
つまり、テレ東伝説の本質は「無謀なマイペース主義」ではなく、「自社の組織リソースを冷静に見極め、報道とエンターテインメントの役割分担を合理的に割り切った結果」に他なりません。近年ではマスター設備の刷新や報道即応体制の強化が進み、国政選挙や緊急度の高い大災害時には迅速に特別報道体制へと切り替わるケースが定着しています。それでもなお「アニメ放送を守り抜く姿勢」がブランドイメージとして定着したことは、結果として同局にとって強力なパブリックリレーションズとして機能しています。