ミルフィーユ鍋の成否を分ける最大の要素は、白菜から滲み出る大量の水分をどのように味の設計に組み込むかという点です。一般的な鍋料理の感覚でたっぷりのだし汁を注いでしまうと、煮立ちとともに白菜の水分でスープが薄まり、ただの「薄味の煮物」に成り下がってしまいます。
基本となるミルフィーユ鍋の白だし黄金比は、濃縮タイプの白だし1に対して水8〜9の割合です。土鍋(3〜4人前・8号鍋)の場合、白だし50mlに対して水400〜450mlが理想的な基準値となります。「少し少ないのでは」と感じる水位(鍋の深さの1/3程度)こそが、白菜の蒸し煮状態を作り出し、野菜本来の甘みと豚肉のイノシン酸を凝縮させる秘訣です。
また、家庭で最も手軽に再現できるほんだしを使ったミルフィーユ鍋では、水400mlに対して和風顆粒だし小さじ2、醤油小さじ2、酒大さじ2、みりん小さじ1を合わせる配合が鉄則です。このアルコール分と微量のみりんが、豚肉特有の臭みを消し去り、白菜の繊維をやわらかくほどく役割を果たします。