「呪いなど非科学的だから法には触れない」と高を括るのは致命的な誤りです。日本の近代刑法において、藁人形を用いた行為は明確な処罰対象となります。
裁判実務における重要概念が「不能犯(ふのうはん)」です。科学的に結果を発生させることが不可能な手段(=神仏に祈る、心の中で呪うなど)で人を殺そうとしても、刑法上は殺人未遂罪には問われません。しかし、これは「罪にならない」という意味ではありません。手段が現実的な法益侵害へと移行した瞬間、即座に実刑や逮捕のリスクが生じます。
実際に過去の藁人形事件の経緯と判例を見ると、以下の罪状で立件・有罪判決が下されています。
- 脅迫罪(刑法第222条):相手の自宅ポストに釘の刺さった藁人形を投入する、写真を送りつける、あるいは目撃させる行為は「生命・身体に対する害悪の告知」とみなされ、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
- 器物損壊罪(刑法第261条):他人の所有地や神社の御神木に五寸釘を打ち込む行為は、樹木を傷つけ枯死させるリスクを伴うため、3年以下の懲役または30万円以下の罰金・科料となります。
- 建造物侵入罪(刑法第130条):夜間に神社の境内や私有地へ正当な理由なく立ち入る行為は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
2022年には千葉県内の複数神社において、御神木にロシアのプーチン大統領の顔写真を貼り付けた藁人形が打ち付けられる事件が発生し、防犯カメラ映像などから被疑者が建造物侵入および器物損壊の容疑で逮捕されました。神域を冒涜する行為は、現代の防犯インフラ(高感度監視カメラや人感センサー)によって確実に特定されます。