多くのオフィスワーカーが直面する「エクセルの数式で引き算をする際、専用の関数が見当たらない」という戸惑いは、エクセルの仕様設計に起因します。結論から言えば、一般的な四則演算におけるエクセル引き算の基本数式は、半角ハイフンを用いた「=セル-セル(例:=A1-B1)」という算術演算子の記述が世界共通の標準規格です。
「なぜ引き算関数がないのか」という疑問に対し、マイクロソフトの製品設計思想を紐解くと、数学的な合理性に行き着きます。加算(足し算)は足す順番を入れ替えても結果が変わらない「交換法則」が成り立ちますが、減算(引き算)は引く順序によって結果が完全に異なるため、引数を並列に並べる標準関数を作ると、意図しない減算順序による人的ミスを誘発しやすい構造を持っています。
なお、関数一覧を丹念に探すとエクセル引き算関数IMSUB(アイエム・サブ)という関数に行き当たります。これを発見して「引き算専用関数を見つけた」と業務に導入しようとする事例が後を絶ちません。しかし、この関数は虚数や複素数を扱うエンジニアリング用関数(複素数 $x+yi$ の差を求めるもの)であり、通常の数値計算においては以下の重大なデメリットを抱えています。
IMSUB関数は「=IMSUB(10, 3)」のように指定すれば「7」を返しますが、引数に指定できるのは2つの要素のみであり、3つ以上の数値を同時に処理できません。さらに、戻り値が文字列形式として扱われる仕様上の制限があるため、後続の計算で予期せぬ計算エラーを招くリスクすらあります。一般ビジネスの実務においてIMSUB関数を利用する価値は皆無であり、基本のマイナス演算子を用いるのが鉄則です。