台風のエネルギー源は、暖かい海水から蒸発する大量の水蒸気です。上昇気流によって水蒸気が凝結して雲になるときに放出される熱(潜熱)が空気を暖め、中心部の空気をさらに軽くして上昇させることで、中心気圧が極端に低下します。
気圧が低下するとなぜ猛烈な暴風が吹くのか、その理由は「気圧傾度力」にあります。平地における通常気圧(約1013hPa)と台風中心(例えば930hPa)との間に80hPa以上の強烈な気圧差が生じると、空気は坂道を転がり落ちるように高気圧側から中心へと猛スピードで引きずり込まれます。さらに地球の自転によるコリオリの力が加わり、中心付近の「アイウォール(眼の壁雲)」の周囲に猛烈な回転風が形成されるのです。
日本近海に来襲する台風の中心気圧は、年間平均で見ると970hPa〜985hPa程度が主流です。しかし、気圧が950hPaを下回ると危険度の次元が跳ね上がります。
- 980hPa〜970hPa(警戒水準): 樹木の枝が折れ、傘が役に立たない。大雨による側溝や小河川の増水に注意が必要。
- 960hPa〜950hPa(重大警戒水準): 昭和・平成の歴史的風水害に匹敵するレベル。走行中の車両が煽られ、看板の落下やトタン屋根の剥がれが相次ぐ。
- 940hPa〜930hPa以下(壊滅的警戒水準): 過去の「伊勢湾台風」や「室戸台風」クラス。広範囲での電柱倒壊、高潮による沿岸部の水没、家屋の屋根全体が吹き飛ぶ甚大な災害が発生。
さらに中心気圧の低下は「吸い上げ効果」による高潮リスクを飛躍的に高めます。気圧が1hPa低下するごとに海水面は約1cm上昇するため、中心気圧930hPaの超強力な台風が満潮時刻に直撃した場合、気圧低下だけで海水面が80cm以上吸い上げられ、そこに猛烈な吹き寄せ効果と巨大な高波が重なって沿岸部を一瞬で呑み込みます。