「手縫いで付けたスナップボタンが、子供が引っ張ったらすぐに浮いてグラグラしてきた」という不満は、縫い針の通し方と糸の張力管理に原因があります。スナップボタンを一生モノの強度で固定するためには、職人が実践する3つの手順を忠実に守る必要があります。
第1に、糸の太さと本数の選定です。一般的なミシン糸(#60)をそのまま1本取りで縫うのは強度不足であり、スナップの金属エッジとの摩擦ですぐに破断します。必ず「手縫い専用糸(30番〜40番)」を用意するか、普通地用糸を使うなら「2本取り」で針に通し、引き揃えて使用します。ポリエステル製の手縫い糸は擦れや引っ張りに強く、長期の洗濯にも耐え抜く耐摩耗性を誇ります。
第2に、穴ごとの結び留め(ブランケット風ロック)です。4つの穴それぞれに単に針をくぐらせるだけでは、どこか1箇所が緩んだ瞬間に全体が連鎖して脱落します。正しい手順は以下のステップで行います。
- 玉結びを生地の裏側(またはボタンの真下)に隠して針を出す。
- 1つの穴に対して針を裏から通したら、引ききる直前にできる「糸の輪」の中に針先をくぐらせて引き締める。
- これを1つの穴につき3〜4回繰り返す。穴の縁に糸の結び目がキッチリと並び、摩擦ロックがかかる。
- 次の穴へ移動する際は、表裏を貫通させず、布地の厚みの中(繊維の層の間)をすべらせて針を渡す。
- 4つの穴すべてを留め終えたら、スナップの土台の裏側に針を出し、小さな玉止めを作って布の隙間に引き込んで隠す。
第3に、コートの見返しやポーチの表地など、「裏地に縫い目を出さない」プロのすくい縫い技法です。針を表側まで突き通すのではなく、表地の繊維を「わずか1〜2本だけ」指先の感触ですくい取ります。左手の指の腹で表地の表面を軽く押さえ、針先が指にチクッと当たらないギリギリの深さを捉えるのがコツです。これにより、表側には縫い糸が一切露出せず、百貨店に並ぶ高級既製服と同じ美しい仕上がりになります。
なお、オスメスの位置が数ミリでもズレると生地が突っ張って歪んでしまいます。これを防ぐプロの裏ワザが「チャコスタンプ法」です。まず凸パーツを正しい位置に縫い付けた後、その突起の先端に水で消えるチャコペンや粉末チャコを少量塗布します。そのまま布地を本来合わせたい位置で正確に重ね、上から軽く指で押さえると、相手側の布にチョークの印が点として転写されます。その印の真中心に凹パーツを据えることで、ミリ単位のズレも生じません。