世間一般には「マイケルの代名詞」として定着したムーンウォークですが、ダンスの歴史において彼は発案者ではなく最高の普及者・完成者です。
このステップの直接的なルーツは、1970年代の米西海岸ポッピン(Poppin')シーンで生まれた「バックスライド(Backslide)」というストリートダンス技にあります。さらに遡れば、1930年代のジャズ界の巨匠キャブ・キャロウェイのステップや、パントマイムの神様マルセル・マルソーが披露していた「風に逆らって歩く(Walking Against the Wind)」芸など、身体表現の長い歴史の中で磨かれてきたイリュージョン技術でした。
ストリートのダンサーたちがアンダーグラウンドで競い合っていた技にマイケルが目を留め、彼特有のキレのある首のアイソレーションや華麗なスピン、爪先立ちといった独自のエレガンスを融合させたことで、芸術の域にまで引き上げられました。