栗の渋皮をあえて残し、芳醇な風味と柔らかさを楽しむ「渋皮煮」。ここで求められるのは、渋皮を剥がすのではなく「苦味成分(タンニン)だけを抜き去り、皮の繊維を極限まで柔らかくする」技術です。
渋皮煮の成功を左右する鍵は、重曹(炭酸水素ナトリウム)の濃度と茹でこぼしの回数にあります。重曹が持つアルカリ性の性質が渋皮の強固なセルロース繊維を加水分解し、スプーンで切れるほど柔らかく変化させます。
基本の黄金比は、水1リットルに対して重曹小さじ1(約5g)です。鬼皮だけを慎重に剥いた栗を鍋に入れ、重曹水で弱火からじっくり加熱します。沸騰すると煮汁がワインのような濃い赤紫色に変化し、アクが大量に浮き出てきます。煮立ってから約10〜12分弱火を維持した後、優しく水で洗い流す「茹でこぼし」を合計2〜3回繰り返します。最後の1回は重曹を入れずに真水だけで茹でることで、残留した重曹特有の苦味や匂いを完全に消し去り、透明感のある仕上がりに導きます。